笑顔でつながる家族の輪(fam[ファム] 2020年夏号)

日野家族
家族の輪

入りづらい、敷居が高いといったお寺のイメージを払拭したい!
誰にでもウェルカムな空間づくり

マーケットイベント、演劇、お盆のかき氷振る舞い…etc。
会場がお寺と聞けば驚くものの、なんだかとても楽しそう。
お寺の仕事もイベントも、とことん楽しむ住職に話を聞いた。

代々続くお寺に生まれ、自然に進んだ僧侶の道

─お寺を継ぐことは、子どもの頃から考えていましたか?
 祖父も父も僧侶で、住職を継いできた家庭で育ったから、自然の流れですね。僧侶になることに抵抗は無かったけど、特に高い志があった訳でもない(笑)。ただ、父が(お寺のことを)とても楽しそうにやっていたのをずっと見てきたから、自分もやってもいいかなと思えました。

─専立寺ではイベントを開催。お寺では珍しいですね。
 元々は父が、若い頃から社会活動的なことも含めて色々やっていました。俺が大学生の頃に本堂を建て直したんですが、いろんな人が色々な使い方を、という父の思いで、階段などの段差が無い造りにしたんだと思います。それで仏事はもちろん、幅広くいろんなことができる空間になった。でも、父がイベントを始めた30〜40年前は「お寺で何やってんだ」と怒る人が多かったハズ。叩かれても父は頑張ってくれたんですよね。父とはお寺のことをはじめ、いろいろ議論したけど、親子というより師と弟子と言った方が近い感覚。師が遺してくれたものがあって今俺がやらせてもらっているので、自分はラクさせてもらっています。

─最も印象深いイベントは?
 例えば、全10回の「大菩薩マーケット」(古着、飲食などが出店)。第1回の出店は5店舗、最後の10回目は29店舗になりました。他にも演劇、フラメンコ、クリスマスコンサート…。前提としては内容にダメなことってないんです。そうは言っても、多少の線引きは必要。お寺の空間を使って何をどう表現するか、そして、どう遊べるかを考えながらいろんなことをやっていく中で、沢山の人が来てくれたら、嬉しいし有難いです。

6歳・2歳の2児のパパ。お寺の家庭生活とは?

─子どもたちとは、どんな風に接していますか?
 仕事時間が厳密に決まっている訳ではないし、必然的に一緒に居る時間が長いので遊ぶことは多いです。そんな時は子どもが楽しいだけじゃなく、自分も一緒に楽しみたい。息子が持ってきたオモチャに、「これは俺が楽しくないから2人とも楽しめることをしよう」と提案もします。どうせ遊ぶなら、しぶしぶつき合うより一緒に楽しんだ方が子どもも嬉しいんじゃないかなぁ。誰かを巻き込むなら、自分だけじゃなく相手も一緒に楽しめることを考えてみたら? と伝えています。

─子育てや家事はしますか?
 役割分担はしていないけど、妻への気遣いはします。四六時中一緒に居るからこそ、関係をうまく保てるように。かといって寄り添い過ぎず、距離感とタイミングが大切だと感じています。実は長男が生まれた後、俺は育児が分からないから何にもせず。妻も初めてだから、どうして欲しいかを上手く伝えられない状態で、大きめの喧嘩をしたことがありました。それ以来、妻が不機嫌な時は「どうしたの」と声をかけるし、要求に納得できれば俺がやる! 子育ては理想通りにならないものだし、その都度二人で考えてやっていけばいいのかなと思います。

家族のプロフィール

パパ:日野岳史乗(ひのおかふみのり)さん・35歳・盛岡市出身・専立寺(せんりゅうじ:盛岡市名須川町)住職、ママ:友香子(ゆかこ)さん・35歳・京都府京都市出身・主婦、長男6歳、次男2歳、史乗さんの母、弟の6人家族。
京都の大学で出会った史乗さんと友香子さん。卒業後、史乗さんはテレビ報道(技術職)の仕事に就くも、3年後に帰郷を決意。2010年に結婚して実家である専立寺の僧侶となり、2019年4月より現職。2013年、長男誕生。2018年、次男誕生。