

『おとうさん』

作・絵:秋山とも子
出版社:瑞雲舎
価格:1,430円
幼かったころ、毎日パジャマ姿で父の帰宅を待ちわびていました。知らず知らずのうちに、覚えてしまった車のエンジン音。その音が聞こえると、「あっ、おとうさんが帰ってきた!」とおおいそぎで弟とカーテンの裏に隠れました。そして、「あれ? いないなあ~」とわたしたちを探してもらうまでが、いわば「おかえりなさいの儀式」だったのです。満員電車に乗って通勤し、会議室ではプレゼンをこなし、きっかり一時間の昼休憩。そうしてまた電車に揺られ、家族の待つ家へ。働くおとうさんは(もちろんおかあさんも!)こんなふうに、一日がんばっていたんですね。文章が無いゆえに、たっぷり絵さがしをしてあそぶことのできる絵本です。
『はちうえはぼくにまかせて』

作:ジーン・ジオン
絵:マーガレット・ブロイ・グレアム
訳:もりひさし
出版社:ペンギン社
価格:1,320円
「好きなことを仕事にする」。これは、誰しもが抱える永遠のテーマなんじゃないでしょうか。主人公のトミーは、植物のお世話が大好き。好きすぎて、目がくっいちゃいそうなくらい「あなたのしょくぶつおおきすぎませんか」という本に熱中しています。トミーはあるとき、ご近所さんがバカンスに出かけるあいだ、観葉植物を預かるアルバイトを考えつきます。はたらくトミーの、いきいきとした表情といったら。彼のようなかろやかさで「ぼくの得意なことだから、ここはまかせてよ!」「そうね、お願いするわ」ってわたしたち大人が言えたなら、もっとここちのよい社会になるんじゃないかしらと夢みています。
『くもとり山のイノシシびょういん 7つのおはなし』

文:かこさとし
絵:なかじまめい
出版社:福音館書店
価格:1,210円
「はたらく」っていったい、なんのためにするのでしょう。お金のため? 誰かの役に立つため? はたまた自分自身の目標を達成するため? くもとり山のふもとのイノシシ先生は、今日も次から次へとやってくる、ちょっとこまった患者さんたちを診察します。ところがみんなのケガや病気はどうも、先生の処方する「とくべつなおくすり」によって治っているような…。そしてそのおくすりはたぶん、愛と言い換えてかまわないものだろうと思います。読みすすめるうちにあらふしぎ、涙がぽろりとこぼれたりもして、肩がふうわり軽くなる物語集です。字が読めるようになったお子さんにも、ぜひ声に出して読んであげたい一冊。

フリーランスライター・こども図書館「みどりのゆび」江刺梢さん
「絵本研究をライフワークとし、保育園での読み聞かせや、zine『K U K U』を制作し絵本紹介の記事を執筆するなど絵本にまつわる活動をしています。いちばん好きな絵本は、ユリ・シュルヴィッツ作の『よあけ』。」